夜の学校で
土曜日の夜のことです。
「全くお前は、おっちょこちょいが直らねえな」
「うん・・・ごめんね、浩之ちゃん」
私は学校に、宿題のノートを忘れてしまい、取りに行くことにしました。でも、一人じゃやっぱり怖いし・・・浩之ちゃんについてきてもらいました。ごめんね、浩之ちゃん。
でも、浩之ちゃん、嫌な顔一つせずについてきてくれたんです。むしろ、うれしそうでした。
いつも優しい浩之ちゃん、大好き。
全くこいつは、しっかりしてるようで、肝心なところが抜けてるもんな。
まあ、「しょうがねえな〜」と言いつつ、しっかりついていってやる俺も俺なんだけど。
ともあれ、夜の学校は何があるかわかったもんじゃない。そんな中にあかりを一人で行かせるわけにはいかないしな。
それに、こういう雰囲気は嫌いじゃない・・・最近はむしろ、好きになってきた。
今まで優しくしてやれなかった分、うんと優しくしてやりたい。そりゃあ、時には意地悪っぽいこともするけど。
そんなことを考えながら、俺はあかりと校門をくぐった。門は開いていた。何だ、不用心だなあ・・・まあ、いいか。ここまで来て門前払いだったら、あかりがかわいそうだし。
・・・あ・・・やだ・・・どうしよ・・・
実は・・・さっきからお手洗い行きたいんです。今日は肌寒いし、よけいに行きたくなってきちゃいました。校舎に入ったら行ってこようっと。
・・・ううっ・・・早く・・・トイレ・・・
おや?あかり、震えてる?
「寒いか?」
「う、うん・・・」
「よし・・・じゃあ」
ぐっと身体を密着させた。
「あ・・・浩之ちゃん・・・」
「嫌か?」
「ううん・・・あったかい・・・」
やわらかな感触が腕に伝わってきた。さらっとした髪の甘い香りが、俺の鼻をくすぐる。
・・・浩之ちゃん・・・あったかい・・・でも・・・こんな時にくっつかれても困るよう・・・
「んっ!・・・ん・・・」
浩之ちゃん、いきなり私にキスをしてきました。
「んん・・・ん・・・」
浩之ちゃんの舌が私の口の中に入ってきます。キスなんて・・・してる場合じゃないのに・・・でも・・・止められない・・・身体が熱くて・・・
「んむっ・・・んん・・・ん・・・」
・・・うう・・・どうしよ、早くトイレ行きたいよう・・・なのに・・・舌が勝手に動いちゃう・・・身体から力が抜けて・・・あっ・・・だめ・・・力抜いちゃ・・・で・・・出ちゃうかも・・・
・・・あかり・・・ほんとにかわいいよな・・・ずっとこうしてたいな・・・
「ね、ねえ・・浩之ちゃん、そろそろノート取りに行かないと・・・」
その声で俺は我に返った。
「あ、そうだな、行こう・・・」
俺たちは昇降口に向かって歩き出した。
「くそっ!ここもだめか!」
「こっちも・・・」
昇降口に着いたのはいいけど、どの入り口も鍵がかかっていて入れません。ああ、どうしよう・・・ほんとに・・・もう・・・我慢できない・・・
そのとき、大きな波が私を襲いました。
「ん・・・んあっ!」
・・・やだ・・・浩之ちゃんに聞かれた!?
「ここもだめか・・・」
浩之ちゃん、まだ入り口を探しています。どうやら気づかれなかったようです。
ほっとしたところで、私も入り口を探し始めました。でも、波は容赦なく私を襲ってきます。時々、スカートを押さえますが、それももう限界です。
・・・ああ、どうしよう・・・もう・・だめ・・・あっ!
「浩之ちゃん!ここ、開いてるよ!」
手をかけたドアが開きました。ああ、助かった・・・
やっとの思いで俺たちは校舎に入った。
当然蛍光灯はついていないが、窓からわずかな光が差し込むので、真っ暗じゃない。とはいっても、やっぱり不気味だ。
そういえば中学の頃・・・志保が、夜の学校で肝試しをやろうって言い出したっけなあ。俺もあかりも、無理矢理参加させられて・・・でも、すぐに用務員さんに見つかって、先生にもバレて散々叱られたっけなあ。
・・・ああっ・・・もう・・・だめ・・・早く・・・トイレ・・・
もう本当に限界でした。
・・・このままじゃ・・・もう・・・「トイレに行きたい」って言わなくちゃ・・・
あかり、さっきからそわそわしてるな。
そうか、あかりって、昔からすごい怖がりだったっけな。お化けとかホラー映画とか、まるでだめだもんな。あの肝試しの時だって、始まってすぐに、怖さの余り泣き出しちゃったんだっけな・・・そう思っているうちに、ちょっとしたいたずら心が湧いてきた。
「・・・わっ!!!」
「!!」
あかり、驚いて声も出ないか。
「ん・・・なんだ?」
なんかズボンが生暖かくなってきた・・・?それに・・・潮のにおい?・・・シャーッと水の音?
「あっ・・・あああ・・・ああ・・・」
あかりのスカートが、変な色に染まっている。いや、濡れている。
「ああ・・・だ、だめ・・・だめ・・・」
スカートの中から流れ出した液体が、俺のズボンを濡らしている。あかりは俺にしがみついたまま離れない。いや、身体が動かないのだろう。
じょろじょろじょろ・・・
ああっ・・・だめ・・・止まらない・・・いやあっ・・・流れ出したおしっこは、どう頑張っても止まってくれません。
「ああっ・・・あああっ・・・止まらないよう・・・」
おしっこは私の脚を伝って流れ、一つの流れは浩之ちゃんのズボンを濡らし、もう一つの流れは靴下に染み込んでいきました。染み込みきれなかったおしっこは水たまりを作っています。
「あっ・・・ああっ・・・」
やっとおしっこが止まりました。でも、足下には大きな水たまりが、そして浩之ちゃんのズボンに大きな染みが・・・
「あ・・・いや・・・その・・・しょうがね・・・って言ってる場合じゃないな」
そわそわしてたのは、トイレ行きたかったからだったのか。怖かったからじゃなかったんだ。
・・・俺・・・とんでもないことしちまったのか?
「こんな年になって・・・おもらししちゃって・・・浩之ちゃんの前で・・・うえええん」
あかりは泣き出してしまった。
「いや、俺が悪かった、冗談のつもりだったんだよ」
「うえええん、えええん」
困ったなあ・・・どうすりゃいいんだ・・・
「ご・・・ごめんなさい・・・わ・・・たし・・・うええん・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
私は浩之ちゃんにしがみついたまま、泣いてしまいました。
・・・浩之ちゃんのズボン汚しちゃった・・・もうだめ・・・嫌われちゃう・・・「汚い」「おもらしする女の子は嫌いだ」って・・・
と、とにかくあかりの脚、ふかなくちゃ。
「えーと、ハンカチハンカチ・・・あった」
ポケットからハンカチを取り出した。
「え?浩之ちゃん?」
「じっとしてろよ。今ふいてやるから」
俺はそう言いながらしゃがむ。すると、あかりの濡れた太ももが目の前にさらされた。潮の匂いが鼻をくすぐる。
あかりはパンツが見えるのも構わず、スカートをつまみ上げた。濡れたパンツが目の前にさらされた。
色は白で、材質は木綿のようだ。その部分は、たっぷり液体を吸い込んで黄色く染まっていた。雫がまだ、ポタポタと落ちている。
俺はあかりの脚をふきながら、自分の下半身が熱くなってくるのを感じていた・・・
浩之ちゃんが私の太ももをふいてくれます。あったかい浩之ちゃんの手・・・でも、ふき終わったら・・・私、浩之ちゃんに・・・捨てられちゃうかな・・・「もうお前なんかいらない」って・・・そう思うと、涙が出てきちゃう・・・。
「よし、これでいいな」
「あ・・・ありがと・・・」
私は涙声で言いました。
「パンツ、気持ち悪い?」
「う、うん・・・でもがまんする・・・」
濡れたパンツが肌に貼りついて気持ち悪いけど、がまん。
「じゃあ、早いとこノート取りに行って帰るか。パンツ早く替えたいだろ」
「うん・・・」
私は浩之ちゃんにうながされ、教室に向かって歩き始めました。
「ノートあったか?」
「うん・・・」
あかりは自分の机から、ノートを取り出した。
「じゃ、帰ろうか」
「・・・・・・」
あかりは立ったまま、動こうとしない。
「あかり?」
「・・・・・・ごめんなさい・・・浩之ちゃん・・・ごめんなさい・・・ぐすっ・・・」
あかりはまた泣き出してしまった。
何か・・・何か言わなくちゃ・・・でも言葉が出ない。
「ねえ、浩之ちゃん?」
「ん?」
「私のこと・・・嫌いになった?」
私はためらいがちに言いました。
「バカなこと言うな!絶対嫌いになんかなんねえよ!・・・いや、もっと好きだ!今までよりずーっと好きだ!今のあかり、すっげーかわいいぞ!」
かわいい・・・?意外な言葉に、私は驚きを隠せませんでした。
「浩之ちゃん・・・怒ってないの?」
「怒るわけねーだろ、あかりのおしっこだもん」
「浩之ちゃん・・・」
「誰にも言わねえよ、絶対に!」
「ほんとに?」
「ほんと。二人だけの秘密だ」
「浩之ちゃん・・・浩之ちゃん!・・・わああん・・・えええん・・・うえええん」
私は、うれしさのあまり、浩之ちゃんの胸の中で思いきり泣いてしまいました。
「好き!大好き浩之ちゃん!」
「俺もだ!」
私たちは唇を重ねると、激しく舌を絡ませ、よだれを垂らしながら吸いあいました。
そして・・・俺は月明かりが照らす教室の中で、あかりを抱いた。
「私、幸せだよ・・・」
「俺もだよ・・・」
月に照らされ、裸のまま固く抱き合う俺たち。優しい時間があたりを支配する。
月明かりの中で、浩之ちゃんとずっとこうしていたい・・・。
優しい浩之ちゃん、あったかい浩之ちゃん。
大好き・・・。
月曜日の朝。
「誰だ誰だ?」
「やだこれ、おしっこじゃない!?」
「誰がもらしたんだ?」
「小学生ならともかく、高校生にもなって、学校でねえ〜」
廊下に大きな水たまりができているのが見つかって、みんなが集まって大騒ぎだ。
「・・・大丈夫、バレっこねえよ」
「・・・うん、そうだよね」
俺たちはそーっと、その場を去った。
放課後の帰り道。
私と浩之ちゃんは、腕をしっかり組んでいます。浩之ちゃん、嫌がってない・・・むしろ、うれしそうです。
「あかり、ちょっと胸大きくなったか?」
「あ・・・もう、浩之ちゃんのえっち・・・」
そう言いながらも、私は胸を浩之ちゃんの腕に押し付けました。えへへ、私もえっち。
「おっ、あかり用のおしめ売ってるぞ〜」
くまのプーさんのプリント付きの紙おむつが、薬局の前に並んでいます。
「あ〜、浩之ちゃんのいじわるぅ!」
「寝る時はおしめ忘れるなよ〜」
「ばかばか〜!嫌い嫌いきら〜い!」
私は浩之ちゃんの背中を、ぽかぽかと叩いちゃいました。
あかり、大好きだぞ!!
浩之ちゃん、大好き!!
おしまい
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