ぼくらの未来は光に満ちているか

私は・・・・ゆっくりとベッドから起きました。しわくちゃになったシーツには
あちこちに私達の汗や体液が染み込んでいます。
私は無言のまま立ちあがろうとしましたが、
全身に力が入らずそのまま恋人の側でじっと見ていました。
私達の身体は・・・・青い月の輝きを受け、汗が光に反射しています。
そして気がついた恋人は・・・・ゆっくりと私を抱きしめました。
私は・・・・彼の想いに気がついていました。
こういう時の彼は・・・・昔の幻影を追い求めています・・・私も
同じように・・・両親がいないことが分かっているから・・・・・
私は・・・・この人の想いに応えてあげるしかないんです。
その為には私の肢体ぐらいこの人に捧げてもいいんです・・・・。
ただお互いが寂しくて・・・恐くて・・・・・戦いの中で・・・
血を求めるような・・事が無いように・・・・・・一人でいるのが
嫌で・・・・・・・だから・・・・・・私達は離れまいとして
強く抱き合うんです。そして・・・秘所の中に・・・一番私と
この人を結び付けている物が入ってくると・・・私は
嬉しくて・・・涙が出てくるんです・・・・まだ私のことを
愛してくれているって・・・思うんです・・・・
判るんです・・・私の中に・・・熱い物が
奥深いところまで染み渡るように入って来る事を・・・。

「はあ・・・・・・・フローラ・・・・・・。」
「シオン・・・・・・・・・・。ねえ・・・見てください・・・・・。」
しばらくして私はシオンを受け入れているお腹のあたりを触りました。
微かですが入っている部分が熱く脈打っています。
「どうしたの・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・くすっ・・・・・ほら・・・見てください・・・・
暖かい・・・・・ですよ・・・・・ほら・・・・・。」私は・・・
シオンの両手をとって私のお腹のあたりを触らせました。
「・・・・・・・暖かい・・・それに脈打っているように・・・・・・。」
「くすっ・・・・私達・・・・生きていて・・・良いんです・・・・よね・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」私達は無言のままお互いを受け入れて
いました。このままずっと・・・・・・寒くなった心を砕くように・・・・
私達の中に暖かい心が取り戻せるように・・・・・そう願いました・・・・・。
そして・・・・・・私の中に・・・・・ゆっくりと・・・・・生命の徴が・・・・・
刻み込まれていきました・・・・・・。私達は
痙攣したあと・・・・・抱き合いながら・・・・お互い涙を
浮かべながら・・・・・部屋に木霊するいやらしい水音を聞きながら
注ぎこまれる蒼き満月の光が私達の肢体を
照らしながら・・・・・夢の中へと落ちていきました・・・・・
明るかった・・・・何もしらない無垢の子供の頃・・・私が知らなくても
いい時代の頃・・・・・・・・無残な死を遂げた私達の両親が
この人を可愛がっていた時代の頃へ・・・・・・私達は・・・・
戻っていきました・・・・・。

朝を迎えました・・・・・・。
私は子供たちを起こすと・・・・・朝食を作りました。
私達がいない間サンチョさんが世話をしてくれていたようで
私は・・・・嬉しくもあり寂しくもあり複雑な心境です。
シオンも・・・・・寂しいようなそれでいて嬉しいような表情をしています。
シオンは・・・・政務を終わらせると・・・・子供達には何も言わず・・・・
どこかへ行ってしまいました。私はどこへ行ったのか知っています。
でも・・・・・私は・・・・・・・両親が無くなった場所すら知らないのです・・・
私はなにも言わず・・・・恋人である夫を見送りました。
それから・・・・シオンの従姉妹にあたるドリスさんと子供達が
騒ぎ始めました。
そういう子供達は泣いて探しましたが・・・・
ドリスさんもしつこく私に聞いて場所を聞こうとします・・・・。
「フローラさん!!貴方は何か知っているんでしょ!!答えてよ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
私は優しそうな笑みを浮かべているだけです。ただそれだけです。
「もういい!!」ドリスさんは子供達と魔物さん達を集めると
どこかに行ってしまいました。

どうして・・・・・・・・一人にして欲しいのに・・・・・・
やってあげないのでしょう・・・・・・一人にして欲しいと
思うから・・・・・過去の追憶を追いかけるのがそんなにいけないのでしょうか・・。
それは・・・いけないのでしょうか・・・・・。
私は・・・何も言わず・・・ただ優しく笑っているだけです。
「・・・・・・・・・・王妃様・・・・王の所在がお分かりなら・・・・・・
教えて欲しいのです・・・・・・どこにいるのですか・・ご心配では
ないのですか!!」オジロンが心配そうに言ってきます。
「・・・・・・・・・どうして・・・一人にして欲しいのに・・・・・・。」
「えっ・・・・・・・・・・それはどういう事ですか!!お願いします・・・
ご存知なら連れ戻してきてください。」
そこへドリスさん達が戻ってきました。ドリスさん達はシオンを見つけたけど
シオンが何も言わずただうずくまっているだけで何も言わないというので
どうしたら良いのかわからないって言っていました。
私はすっくと立ちあがりました。

冷たい洞窟の中で・・・・・・私達はシオンと再会しました。
「父様・・・・・・・。」息子が寂しそうにうずくまるシオンを見ています。
娘は私にピトッとくっ付いて離れようとしません。
「寂しそう・・・なんだ・・・シオン、どうしてなんだよ、なんでこんな所に
いるんだよ・・・。」ドリスさんがシオンの肩を揺さぶり
ます。
洞窟の中は冷たい感じがしています。凛と張り詰めた
雰囲気はシオンの心を照らすようです。
でも・・・私はここがどこか知っています・・・・・・・・。
そうパパス義父さんがゲマに焼かれ死んでいったところ・・・・・・
シオンは過去を追いかけようと・・・・しています・・・・・・。
「ドリスさん・・・・・・私に・・・・任せて・・・・・もらえますか・・・・・・・・?」
「?????」魔物さん達も首をかしげるだけでした。

私はうずくまるように顔を伏せているシオンに近づきました。
そして側にかけてあるマントとターバンを取ると・・・マントを
・・・・・・・シオンにかけてあげました・・・・・・・。
「どうして・・・・・・ここが・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」私達は無言のまま
見詰め合いました。そして隣にちょこんと座りました。
その様子を見ていたドリスさん達は何も言えません。
「・・・・・・・・・・・・・・・・暖かいですか・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「そうですか・・・・・・良かったですね・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・風邪を引くよ・・・・・・・・・・・。」
「看病してくださいね・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌だ・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」私達は普通の会話をしています。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・君は・・・・僕を・・・過去から・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・私達には何もありませんから・・・・
ただ生きている事を許してもらっているような物ですから・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」私はシオンに寄りかかりました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・パパス・・・父さん・・・・この子が僕の・・・
妻だよ・・・・・いい子でしょ・・・・・・あの時・・・・会わなかった・・・ね・・・・・
僕とフローラが一緒にいても・・・・・・いいよね・・・・・もう・・・・・
良いんだよね・・・・・・・・・・・これから・・・・・ずっと・・・
あなたの影を追いかけなくて・・・・・・・・・・・良いんだよね・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」私は黙っていました。

「父様・・・・・・・・・・過去を追いかけていた・・・・二人とも・・・・・。
どうして・・・・そんなに・・・・過去を・・・・・・未来を見なくちゃ・・・・・。」
息子がそう言いますが・・・私には・・・・・両親を見たことがありません。
ルドマンは私を育ててくれた・・・恩人です・・・・・私はあの人の娘です・・・・
でも・・・・・分かっています・・・・・違うんだ・・・・って・・・・・

「しばらくここにいるが・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・風邪・・・・引きますよ・・・・・。」
「君が看病してくれるなら・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
シオンは黙って私を抱きしめました。
(終わり)



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